第77話 個人突破とパスワークの最適バランス ― ジュニアサッカーにおける攻撃選択の考え方 ―
目次
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ジュニア年代の攻撃指導で起こりがちな課題
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個人突破の本質と育成的価値
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パスワークがもたらす戦術的優位性
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「突破かパスか」を決める判断基準
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年代別に考える攻撃選択の優先順位
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個人とグループをつなぐ指導アプローチ
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試合で判断力を高めるトレーニング設計
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保護者に伝えたい攻撃選択の考え方
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まとめ:最適バランスとは「使い分ける力」
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1. ジュニア年代の攻撃指導で起こりがちな課題
ジュニアサッカーの現場では、「個人突破をさせるべきか」「パスを優先させるべきか」という議論が頻繁に起こります。ドリブルに偏ると“自己中心的”と捉えられ、パスを重視しすぎると“消極的”になる。この二項対立的な捉え方が、攻撃指導を難しくしている要因です。本質的には、どちらが正しいかではなく、状況に応じた選択ができているかが重要です。
2. 個人突破の本質と育成的価値
個人突破は、数的不利やスペースが限られた局面を打開できる強力な手段です。特にジュニア年代では、ボールを扱う技術、間合いの感覚、失敗から学ぶ経験値を積み上げる重要な機会となります。突破を否定する指導は、チャレンジ精神や創造性を抑制するリスクがあります。育成の観点では、「抜ける・抜けない」ではなく、「仕掛ける判断」そのものを評価する視点が不可欠です。
3. パスワークがもたらす戦術的優位性
一方、パスワークは相手を動かし、数的優位や時間的余裕を生み出します。味方を活かす意識、サポートポジションの理解、予測力など、チームスポーツとしての基盤を形成します。特に守備組織が整っている相手に対しては、パスによる崩しが有効です。ただし、パスは「安全な選択」ではなく、「前進するための手段」であるという共通認識が重要です。
4. 「突破かパスか」を決める判断基準
攻撃選択の判断基準はシンプルです。
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相手との距離と向き
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背後のスペースの有無
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味方の立ち位置と準備状況
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ゴールへの優先度
これらを瞬時に認知し、「自分が行く方が前進できるのか」「味方を使った方が優位か」を判断します。指導現場では「パスしろ」「仕掛けるな」と結果で制限するのではなく、判断材料を与えるコーチングが求められます。
5. 年代別に考える攻撃選択の優先順位
低学年では、まず個人突破を通じてボールと相手に向き合う経験を重視します。中学年になると、突破とパスの併用を促し、高学年では相手の守備状況に応じた選択を求めていきます。年代が上がるにつれ、「自分が主役」から「チームでゴールを奪う」意識へと段階的に移行させることが、無理のない成長曲線につながります。
6. 個人とグループをつなぐ指導アプローチ
個人突破とパスワークは対立概念ではありません。突破があるからパスが活き、パスがあるから突破が成功します。例えば、1対1で仕掛ける選手の背後にサポートを置くことで、「抜けなければパス」という選択肢が自然に生まれます。個人→2人組→グループへと発展させる設計が、最適バランスを生み出します。
7. 試合で判断力を高めるトレーニング設計
判断力向上には、制限付きゲームが有効です。タッチ数制限、ゴール条件の設定、数的不均衡などを活用することで、突破とパスの使い分けを促せます。重要なのは、正解を教えることではなく、「なぜその選択をしたのか」を言語化させる振り返りです。これにより、判断の再現性が高まります。
8. 保護者に伝えたい攻撃選択の考え方
保護者からは「なぜパスしないのか」「なぜ仕掛けるのか」という声が上がりがちです。育成段階では、成功・失敗以上に選択の質が重要であることを共有する必要があります。チャレンジを肯定する文化が、選手の成長速度を大きく左右します。
9. まとめ:最適バランスとは「使い分ける力」
個人突破とパスワークの最適バランスとは、比率の問題ではありません。状況を認知し、最も前進できる手段を選択できる力こそが本質です。ジュニア年代では、その判断力を育てる環境づくりが最重要課題となります。
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